ある高齢者の女性の死について、30年来の知り合いという女性はこう話した。
80歳で人生を終えた女性。その最期は6畳1間の部屋の中で、発見したのは点検に来たガス会社の従業員だったという。
誰からもみとられない“孤独死”だった。
福岡県篠栗町で特殊清掃会社を経営する男性は、こうした“孤独死”の現場を数多く見てきた。
死亡した人の部屋をオーナーなどからの依頼で片付ける“特殊清掃”を請け負ってきたからだ。会社の倉庫には引き取り手のない洋服や家財道具といった“遺品”が山積みになっている。原則、1カ月で処分することになっているが、半数は引き取られないまま処分されているという。
現場に赴くたびにわき上がる“やりきれない”思い。自らも人生を悲観して自殺を図り、一命を取り留めたという経験を持つこの男性は、「孤独な死を減らしたい」と考え、安否確認を専門とするNPO法人を立ち上げた。
国による明確な定義すらない“孤独死”。その現実を見つめていく。
去年の春、福岡市で高齢者などの安否確認を専門とするNPO法人が立ち上がることを知り、ニュースの企画用として取材を始めたのがきっかけでした。
当初は孤独死の現場を通じて、つながりを持てない社会の実態を描くといったイメージで取材に臨んでいました。しかし、実際にNPO法人の男性の活動に密着してみると、孤独死する人の中には、その現実を受け入れた上で亡くなっていく人も少なくないのではと感じました。人生の最期をどのような形で迎えるかは一言では語れないことですが、それでも、取材を重ねる度に、私は死ぬときは家族や友人に囲まれ、悲しまれて死んでいきたいという思いが強くなっていきました。
この番組が自分の最期そして他人の最期との向き合い方について改めて考えるきっかけになればという思いを込めて制作させて頂きました。
報道局報道部 永松裕二郎
荷物の仕分け作業をする様子