江戸時代から続く久留米絣を守り続け、2年前に他界した夫の遺志を継ぎ、現代に息づく新たな織物の世界を生み出す。
共に久留米絣を制作してきた夫・哲哉の亡き後、松枝の一人息子・崇弘が会社勤めを辞め、家業を継いだ。松枝は夫・哲哉が家族同様に大切に育ててきた「藍」の管理を崇弘に託した。松枝が伝えたいもの、それを引き継ぐ崇弘の思いは・・・
藍がより美しく発色する環境を求め、今は亡き夫・哲哉と共に、久留米市の山あいに工房を構えた松枝。そこには天然染料を用いる作家にとって不可欠な良い水があった。そして同時に、豊かな自然は、二人に様々なアイデアを与えてくれた。
松枝は藍が取り持つ縁で、哲哉と出会い結婚。大木町に嫁ぎ当時、久留米絣の第一人者だった哲哉の祖父、玉記のもとで、藍染めを学んだ。師であり、家族でもある玉記の言葉をきっかけに、久留米絣の染織作家としてスタートを切る。
松枝はもともと絵画の世界を志し、芸大を受験するが失敗した。そんなある日、デパートで機織りの実演を目にする。一本ずつの糸で絵になっていく織物の世界に惹かれ、郡上紬の門を叩くが、ある出来事をきっかけに久留米絣にたどり着く。
自由な発想で久留米絣を制作してきた松枝小夜子。2年前、ともに制作をしてきた「久留米絣」技術保持者の夫・哲哉が他界した。松枝はいま、基本に忠実な仕事を心掛けている。夫の死後、指導者としての意識がより強くなったのだ。
優れた技術を持つ九州各地の匠たちを紹介している「匠の蔵」。
10月の匠は久留米絣の染織作家・松枝小夜子さん。取材を終えた歌人・俵万智さんが見どころを語りました。