福岡県大川市の組子職人。JR九州「ななつ星」を契機に大川組子の名を全国区にした。
今年、木下はこれまでにない作品を完成させた。宮崎県の霧島連山を映した作品は、幅10メートル、部品の数は4万ピースを超える大作だ。製作に1年を費やした。そして次の目標は海外に組子を普及させること。家具の町、大川にしかできない組子入りのテーブルや扉の製作。組子家具が海外の一般家庭で使われる風景を夢見る。
今年開業10年を迎えるJR九州のクルーズトレイン「ななつ星」。内装に木下の組子が採用され、組子の認知度は急激に高まった。全国から製作依頼を受け、これまでに無かったホテルのロビー、マンションのエントランスなどに組子を取り入れるなど、仕事の幅は格段に広がった。「ななつ星が無かったら今の自分は無い」と木下は語る。
大きな作品なら1万を超える部品が使われている木下の組子作品。部品はすべて手作り、デザインによって、それぞれ違う長さ、違う角度の切れ込みがつけられている。鑿や鉋など、組子専用の道具は多数あるが、木下は一番の道具は自身の手だという。紙1枚の厚さを感じ取る「手加減」で組子を作る。
複数の幾何学模様を組み合わせて作る大川組子。木下はもともと和室の欄間などに収まっていた組子をインテリアの分野に進出させた。コロナ禍、組子の需要は減り、売り上げは激減した。木下はその時期を、新商品の開発、他分野クリエーターとのコラボ作品を試みるなど、肯定的にとらえた。
優れた技術を持つ九州各地の匠たちを紹介している「匠の蔵」。12月の匠は、福岡県大川市の木下正人さん。JR九州「ななつ星」を契機に大川組子の名を全国区にした匠の“志と技”、ぜひご覧ください!