鹿児島県奄美大島の泥染め職人、金井一人。奈良時代の文献にもある染色方法「泥染め」を現代に伝える。奄美の特産、着物の高級ブランド「大島紬」。その製作工程は約30に及ぶが、そのほとんどが分業で行われ金井は「染め」を担っている。
泥染めの技術を受け継ぐ長男、金井志人(ゆきひと)は、布だけでなく、木材、サンゴなど違う素材も染めることに挑戦している。泥だけでなく、藍などほかの染料を用いることでアートの世界にも踏みこんだ。また、海外の文化施設や大学でワークショップなどを行い、泥染め技術を広める活動も始めた。途絶えそうになった奄美の文化は世界に拡散していく。
和服の需要が減り、泥染めの仕事も少なくなった昭和の終わりに、金井は打開策を模索する。泥染めした布のサンプルをアパレルやデザイン会社など70社ほどに一方的に送ったところ、2社から問い合わせがあったという。当時、周囲からは「泥染めの安売り」と揶揄されたが、泥染めが着物以外の業界に進出した瞬間だった。
和服の需要が減り、昭和の最盛期に島全体で年間28万反を生産していた大島紬は、今では4000反ほどに激減した。昭和の終わり頃、金井は観光客向けに泥染め体験を始めた。泥染め体験は人との繋がりをつくり、新たな出会いの場となった。その結果、泥染めは、洋服など他の繊維業界からも注目されるようになっていく。
大島紬を泥染めする工程の1つに、島に自生する「テーチ木」の煮汁で染める工程がある。テーチ木を細かなチップにして、丸2日間煮込んで作った染料で絹糸を染める。染色することによって絹糸はだんだん太くなるが、太すぎると織る際に織りにくくなるという。ほどよい太さに整えるのが匠の技だ。
鹿児島県奄美大島の泥染め職人、金井一人。奈良時代の文献にもある染色方法「泥染め」を現代に伝える。奄美の特産、着物の高級ブランド「大島紬」。その製作工程は約30に及ぶが、そのほとんどが分業で行われ金井は「染め」を担っている。絹糸を織って防染し、染めた後、解いて再び織ることで大島紬特有の柄はできあがる。1着の着物を完成させるためには、島の多くの人の力が必要だ。
優れた技術を持つ九州各地の匠たちを紹介している「匠の蔵」。4月の匠は鹿児島県奄美大島の泥染め職人・金井一人さん。
木と泥だけで高級ブランド「大島紬」を生み出す、その技術は必見!取材を担当した歌人・俵万智さんとナレーション担当のジョン・カビラさんが見どころを語ってくれました。