熊本市の建築デザイナー。これまでに400軒以上の取り壊し寸前の古い建物を再生・改築し復活させてきた。特に民家を改築した店舗が軒並み人気店となったことから「繁盛店舗仕掛け人」と呼ばれるようになった。
山野の改築は時に荒療治を施す。コンクリート壁をぶち抜き、窓を作る。2階の床を剥いで、吹き抜けにする。山野は生涯現役を誓うだけでなく、夢は「お金は無くとも、やる気だけはふくらませた若者」を後押しすることだという。今年、山野は古希を迎える。
家屋やビルの取り壊しで出た、本来なら捨てられるはずの建築資材を山野は自社の倉庫に保管している。それは大量のレンガであったり、襖や障子などの建具だったり様々だ。家一軒分の木材を使って、新たに生まれ変わった「120歳の新築」の家を訪ねた。
2016年の熊本地震では多くの店舗、家屋が被災した。当時、倒壊した建物を取り壊すための補助金が出ていたにもかかわらず、建物を残す決断をした人を山野は応援する。家屋、店舗、ビルなど、震災後の100年を見据えて修復・復興に奔走した。
山野は建築が縁で経営の相談に乗ることも多い。熊本市内の経営難に陥った古い旅館を5つの店に改装し、利益を生み出すシステムも作った。経営者個人が精一杯の努力を怠らない店が大勢集まれば、本当の活気ある町に変わっていくと考える。
山野潤一は熊本市の空き家が目立つ裏通りに密集していた古民家を、100軒以上も店舗に変え、人気店に導き、町ごと復活させた。建築家として駆け出しの26歳のころ、古い蔵を改装した際、蔵のオーナーから授かった言葉が「捨てるはゴミ 拾うはモノ」だった。以来、山野は古い建物を再生させることに力を尽くす。
優れた技術を持つ九州各地の匠たちを紹介している「匠の蔵」。3月の匠は、熊本県熊本市の山野潤一さん。これまでに400軒以上の取り壊し寸前の古い建物を再生・改築し復活させ「繁盛店舗仕掛け人」として活躍する匠の“志と技”、ぜひご覧ください!