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【独自】国産は「土」だけ… 中国産ゴボウの産地偽装は“16年” 鹿児島の社長が語る“あきれた手口”


2022/12/26 20:00
サムネイル
ゴボウを巡る産地の偽装が、TNCの独自取材で明らかになりました。

「新鮮土付き」と書かれているゴボウ、本当の産地は実は中国なんですが、「国産ゴボウ」として福岡県北九州市を中心に10年以上に渡って流通していました。

TNCは販売会社を直撃。

社長が明かしたのは、消費者の信頼を裏切る、悪質であきれた手口でした。



北九州市の中央卸売市場。

様々な野菜が入った段ボールが所狭しと並び、年間10万トン以上の野菜を取り扱っています。

北九州市をはじめ福岡県内の食卓を支える、いわば「青果基地」です。

年末の繁忙期を迎え、もうひと踏ん張りのこの時期、信じられない「ある問題」に直面していました。



◆北九州青果 担当者
「これですね」

担当者に案内された先にあったのは、「返品」と書かれた紙とともに山積みにされた「ゴボウ」の段ボール。

これは一体…?

◆北九州青果 担当者
「実際には中国産を国産に見せかけて泥をまぶして販売していたということですね」



「新鮮・土付きごぼう」と書かれたこれらのゴボウ。

裏面を見ると栽培地・青森県産と書かれていますが、これは真っ赤な嘘。

実際は中国産の『産地偽装ゴボウ』だったのです。



発覚したのは12月22日。

販売元である鹿児島県出水市の「毛利商店」の男性社長が北九州青果を訪れ、突然、関係者に「謝罪」をしたということです。

◆北九州青果担当者
「驚きも怒りもどちらもですね。国産と信じてお召し上がりいただいた方のことを思うと許せない思いです」



その手口は、業者を通じて中国産を仕入れ、そこに国産の土をまぶす形で偽装。

つまり、「土付きごぼう」と書かれたこの商品、国産だったのは”土だけ”でした。

「毛利商店」の偽装ゴボウは北九州青果が取り扱うゴボウの2割近くを占め、取引を開始した2010年から実に12年間にわたって偽装が行われ続けていたというのです。




報告を受けた直後、北九州青果の担当者は仲卸業者に連絡、回収作業に追われています。

◆北九州青果担当者
「これが追加で返品された分かもしれないですね」

◆電話をかける北九州青果担当者
「箱が若干違うんですかね?あー、サイズが違うんですかね?」

こちらの一角にあった段ボールの山も、担当者が把握し切れていない『産地偽装ゴボウ』でした。

◆北九州青果担当者
「遠隔地のスーパーや量販店の所まで仲卸さん経由で行っている分は時間がかかって戻ってくる所があるかもしれません」



実は毛利商店の『産地偽装ゴボウ』。

福岡県にとどまらず、関門海峡を越えて広島県や四国地方などかなり広い範囲で出荷されていたと言います。

出荷した仲卸業者は憤りを隠せません。

◆仲卸業者(電話取材)
「まさかこんなことしてる人いまだにいたのか、という思いですね。年末は福岡県は『がめ煮』を作る家庭多いと思うんで、結構需要は大きい方なんですよね、ゴボウって。必死に集めていく形ですね」



12月26日のTNCのニュースを発端に明るみになったこの事実に、北九州市民の反応は…

◆北九州市民
「なんでもかんでもアサリも偽装、シジミも偽装、えー、ゴボウまで偽装だったの?びっくりね!」

◆北九州市民
「他の農家さんも疑われるようになったら気の毒」



市場、卸業者、消費者、多くの信頼を裏切るこの悪質な産地偽装行為は一体なぜ行われたのかー。

TNC取材班は、販売元である「毛利商店」がある鹿児島県・出水市へと向かいました。

◆記者リポート
「見えてきました、こちらですね。こちらがゴボウの産地を偽装していた毛利商店です」

ブラインドやシャッターなど全てが閉ざされた会社。

果たして、北九州青果に謝罪に来たという男性社長はいるのかー。

◆記者
「テレビ西日本なんですけども、産地の偽装の関係で取材に来たんですが…」

◆男性社長
「今ちょっと、きのう、弁護士さんの方に連絡も何も…」

たどたどしく取材に応じるこの男性こそ、毛利商店の責任者、毛利強社長です。



偽装行為は本当にあったのか、尋ねるとー。

◆毛利商店 毛利強社長
「『偽装しました』というのは100%間違いないです」

産地偽装をはっきりと認めました。



◆記者
「なぜ、こういった産地の偽装という形になってしまったんですか?」

◆毛利商店 毛利強社長
「これ本当にもう身勝手な話なんですけど、国産を買って出しても、採算が、うちが出した時点で赤字になるから、どうしても従業員も抱えているし支払いもあったし、偽装して少しでも売り上げを上げて」

毛利社長によると、中国産のゴボウの仕入れ値は10キロあたり1200円ほど。

それを袋詰めして中国産のままで販売する場合、価格は1500円ほどになると言います。

しかし、国産として販売すると、価格は2700円ほどに跳ね上がるということです。

つまり単純計算で5倍の利益を得ていたことになります。



こうして不正に得た売り上げは一体いくらになるのかー?

◆記者
「総額はいくら?」

◆毛利商店 毛利強社長
「今年の売り上げで5000〜6000万」

◆記者
「じゃあ、どのくらい(の期間)されてたんですか?」

◆毛利商店 毛利強社長
「ここに私が法人を立ち上げて12年目なんですよ。その前の個人で約4年やっとったと思います。約16年くらい」

◆記者
「16年近くこういったことを?」

◆毛利商店 毛利強社長
「はい」



「毛利商店」の屋号を掲げる前から、実に16年もの間続けられていたという偽装。

多い時には1億円近い売り上げもあったと言います。

◆記者
「偽装していた野菜はゴボウだけ?」

◆毛利商店 毛利強社長
「はい、そうです」

◆記者
「誓って言える?」

◆毛利商店 毛利強社長
「はい、うち他は扱ってないですから」

◆記者
「なぜゴボウに目をつけたんですか?」

◆毛利商店 毛利強社長
「葉物だったら長くても2、3日で弱ってしまうものですから。どうしても根モノは日持ちがするからとゴボウを始めた」



なぜ、ゴボウの産地偽装は長年バレなかったのか?

そのあきれた手口を毛利社長は明かしました。

◆記者
「16年間、売値買値は書き換えていた?」

◆毛利商店 毛利強社長
「1200円、1300円で仕入れて、『これで国産買えないよな』っていうのがあって。仕入れる時に2ケース1個分っていう仕切り書で送ってくれと頼んだと思うんです。それやったら1ケースが運賃は別にして2200円で仕入れてるような伝票になるから」



◆記者
「検査の目はどうやってすり抜けられてた?」

◆毛利商店 毛利強社長
「(農水省の)検査入るときは産地証明をとっとかないかんから、その時はちゃんと業者から国産(ゴボウ)をもらって産地証明をつけてもらって、それを一応提出して、それでなんとか抜けてきたって感じなんですけど。今度は抜き打ちで…」

「伝票への細工」、「検査への事前準備」、そうした偽装が見破られたのは12月20日に農水省が実施した「抜き打ち検査」がきっかけだったと明かしました。



TNC取材班は最後に、例の、ゴボウに『国産の土』をまぶしていた件について問いただしました。

◆記者
「土はここでつけてたんですか?この場所で?」

◆毛利商店 毛利強社長
「はい。(中国産は)検疫で泥がついとったら引っかかるから洗った状態で来るんですけど。偽装のこともあるし、土をつけてカットして長さをそろえて…」

◆記者
「土をつける時とか、罪悪感とかあったんですか?」

◆毛利商店 毛利強社長
「出荷してる時点でずっとある。全く無いということはない。特に報道ですね、一番は。色んな所で偽装の問題が出た時はずっと考えてました。『うちのゴボウが(いい)』と買われたお客さんがたくさんいらっしゃると思うので…」

後悔…時すでに遅しー。

一度裏切った信頼はそう簡単には戻りません。

「毛利商店」は北九州青果の他、飯塚市や愛媛県の青果卸売会社と取引を行っていて、今後は「補償などの対応に当たりたい」としています。

(TNC報道ワイド「記者のチカラ」 2022年12月26日OAより)
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