故障で長期離脱しているエース千賀が不在の先発ローテで新加入の外国人右腕、ニック・マルティネス投手(30)の存在感が増している。コロナ禍で来日が遅れ移籍後初登板が5月にずれ込みながらここまでチーム最多の5勝(1敗)。日本ハム時代を上回る最速156キロを計測した直球に加え、精度が際立っているのがチェンジアップだ。味方が得点した際の派手なリアクションも話題の「サタデーマルちゃん」の快投で、土曜日のチームは曜日別勝率で最高の7割(7勝3敗1分け)を記録している。
マルティネスの球種は直球とカットボール、チェンジアップ、カーブ、ツーシーム。球種の豊富さと制球の良さは昨年まで在籍した日本ハム時代と変わらない特長といえるが、ソフトバンクでは直球の球威がアップした印象がある。初登板だった5月1日にいきなり156キロをマーク。以降も登板試合では全て最速は153キロを超え、剛腕へのイメージチェンジで白星を重ねてきた。
豊富な球種の中でも目を引くのがチェンジアップだ。6試合計38奪三振の決め球の内訳を見るとチェンジアップ23個、直球10個、カットボール4個、カーブ1個で、チェンジアップが半数以上。来日初の2桁奪三振を記録した5月29日の巨人戦では10個のうち実に9個がチェンジアップで奪ったものだった。
マルティネスの奪空振り率13・8%は500球投げた以上投手の中でオリックス山本に次いで12球団2位とハイレベルだが、チェンジアップに限るとさらに大きくはね上がり40・9%。これはチェンジアップを50球以上投げた投手の中では12球団ダントツの数字だ。打者の左右を問わず威力を発揮しているのは被打率も同様で、通算0割6分1厘(33打数2安打)。右打者には13打数2安打、左打者には20打数でいまだ0安打と”魔球”ぶりがうかがえる。
実はこのチェンジアップには左の好打者が多いソフトバンクも苦しめられており、昨年は柳田、中村晃、栗原がいずれもチェンジアップを打っての安打はなし。栗原は全打席通算で6打数0安打だった。味方の得点時には何点差があってもベンチで大はしゃぎし、自身が登板時の援護点は6試合で計36点。仲間を信じ、仲間の援護を引き出す「昨日の敵は今日の友」が、リーグ連覇に欠かせない戦力となりつつある。
(データは6月7日現在)