昨秋のドラフト会議で指名した支配下5選手が全て高校生だったソフトバンクで、4人のルーキー野手が全員実戦デビューした。既に2軍戦も経験した1位の井上朋也内野手、3位の牧原巧汰捕手に加え4位の川原田純平内野手はこれまで3軍で10試合程度に出場。唯一出遅れていた2位の笹川吉康外野手が21日の3軍戦でプロ初の対外試合に臨んだ。
独立リーグ・四国アイランドリーグpkusの徳島をタマスタ筑後に迎えての定期交流試合。笹川は7回の守備から中堅に入り、その裏の攻撃で打席が回ってきた。無死一塁、初球のストレートを強振し右中間フェンスを直撃する二塁打。3軍とはいえプロ入りして最初のスイングが長打となった。
実戦デビューから一夜明けた22日、笹川は興奮気味に前日の感触を振り返った。「初めての実戦、楽しみしかなかった。初球から振れるのが高校時代からのスタイル。いつも通り振れた」。打席に入る前に守備に就いたことで緊張がほぐれたといい、スイング後の手応えを「意外と打球が飛んだ。あそこまでいかないと思った」と口にした。
193センチ、85キロ。横浜商高時代に甲子園出場経験はないが、握力は左右ともに80キロ以上を誇り、背筋力は300キロという規格外の逸材だ。背番号は柳田が入団から4シーズンつけていた44。注目度も高かったが1月の新人合同自主トレ中に左足の親指、中指を負傷し、2月のキャンプも同期の井上、牧原らがA組(1軍)を1日体験するなど順調すぎるスタートを切った中でリハビリに専念した。
もっとも、リハビリ組にいたことはマイナスばかりではなかった。両アキレス腱のコンディション不良で同じリハビリ組にいた柳田と接近。バットをもらい、打撃練習中は間近で密着するなど、故障していなければ話す機会すらなかったかもしれない昨年のパ・リーグMVP選手と濃密な時間を過ごすことができたのだ。
負傷から約3カ月。ようやく実戦デビューまでたどり着いた18歳は冷静に自分の立ち位置を見つめている。「金属バット時代は内角も怖くなかった。(木製の)今はしっかり芯に当てないと飛ばない。まずは3軍で。守備は打球感がないので怖いけど、バッティングには自信がある」
笹川は22日の同カードにも途中出場し四球、三振。四球で出塁した際は相手投手の暴投で一気に三塁まで進むなど足の不安がないことを印象づけた。ベンチで大きな声を出す場面もあり、快音はなくても元気いっぱいにアピールした。
井上、牧原巧はキャンプで1軍首脳陣からも将来を期待され、川原田は1年目ながら遊撃の守備で高い評価を受けている。ドラフト5位の田上は高3時に投手転向してすぐ150キロ超を記録するなど伸びしろ十分。遅れてきた笹川も含め、魅力あふれる2021年入団組が次世代のスターを目指して切磋琢磨している。
(取材=内藤賢志郎)