2021/02/25 20:00
TNCが検証報道を続けている太宰府主婦暴行死事件。
「対応に不備無し」との主張を続けている佐賀県警の新たなトップは、遺族が求めている再調査を行わない考えを明らかにしました。
◆松下徹本部長
「よろしくお願いします」
25日、佐賀県警に新たな本部長が着任会見を開きました。
◆松下徹本部長
「この度急遽着任することになりましたが、県民の安全安心を守る警察活動にいささかな間隙もあってはならず、身が引き締まる思いがしております」
松下徹新本部長(50)は東京大学法学部卒業後、警察庁に採用。
警察庁長官官房参事官などを歴任しています。
この時期の本部長交代は、異例中の異例。
背景にあるのは―
◆松下徹本部長
「福岡県太宰府市における傷害致死事件。本件は最も重要な案件であります」
太宰府事件を巡る対応で批判を浴びた、前本部長・杉内由美子氏の突然の異動でした。
◆相談録音音声
家族「被害届をなんで受理せんと」
A巡査「そう簡単になんでも被害届を取れるものではない」
家族「警察はなんかあれば責任とるんですか?」
2019年10月、佐賀県の主婦・高畑瑠美さん(当時36)が、山本美幸被告らから木刀などで暴行を受け死亡したとされる、いわゆる“太宰府事件”。
事件前、佐賀県警鳥栖警察署が遺族から10数回も相談を受けながらも事件を防げなかったことから、当時の対応に批判が集まりました。
しかし、杉内由美子前本部長は、佐賀県議会で「対応に不備はなかった」と主張しました。
▼杉内由美子本部長(当時)(佐賀県議会2020年12月)
「ご遺族からの鳥栖警察署への一連の申し出の趣旨は、被害者の身の危険を訴えるものではなく、被害者の女性を巡る金銭貸借トラブルをどうにかしてほしいというものであり…」
遺族の相談は“金銭トラブルだった”と断定。
しかし当時の相談記録に、金銭トラブルとはひとくくりにできない記載が次々に見つかるなど、内部調査結果との矛盾点が指摘されると、徐々に立場が苦しくなっていきました。
◆常任委員会(2020年12月)
井上祐輔県議(共産党)「この事実確認結果は本部長の責任で確認をされたということでよろしいですか?」
杉内由美子前本部長「県警察において確認させて頂いた」
井上祐輔県議「ですから県警察ということは、杉内本部長の責任で確認されたのですか?」
杉内由美子前本部長「県警察において確認させて頂いた」
井上祐輔県議「じゃあ誰の責任でこれを確認した?誰が責任者ですか?」
◆常任委員会後(2020年12月)
記者「本部長、誰もが納得できる説明をされたとお思いですか?」
県警「広報を通じて下さい」
記者「議会に対して不誠実な対応なんでは?謝罪はされるんですか遺族に。もう、このまま終わらせるつもりですか?」
頑なに見えた議会などでの対応について、実は、本心ではなかったのでは?と複数の関係者が証言しました。
▼内情を知る関係者
「杉内本部長は体力的にも精神的にも参っていた」
「遺族に対してもちゃんと対応したいのにと悩んでた」
▼杉内由美子本部長着任会見(2019年8月)
「みなさん初めまして、本日付で佐賀県警本部長を拝命した杉内と申します」
杉内氏が佐賀県警本部長に着任したのは、瑠美さんが亡くなる2か月前のこと。
大阪府警初の女性部長に抜てきされるなど、輝かしいキャリアを重ねてきた杉内氏が特に力を入れてきたのが「犯罪被害者や遺族への支援拡大」だったのです。
それだけに、遺族対応には苦慮していたといいます。
▼内情を知る関係者
「杉内さんは、せめてもっと丁寧に遺族に説明できないかと考えていたようだ」
しかし、問題はどんどん大きくなり、警察全体の信頼に関わる事態にまで発展しました。
◆参議院内閣委員会(2020年12月)
田村智子議員(共産党)「(遺族の話に)まともに耳を傾けなかった、その結果、事件性や危険性に気付けなかったのではないのか。捜査怠慢ではないのか」
小此木八郎国家公安委員長「佐賀県警察において慎重に事実を確認した結果、一連の申し出は金銭貸借のトラブルについてであり…」
田村智子議員「佐賀県警の言い分だけじゃないですか、だから聞いているんですよ。それでいいのか。遺族と言い分が食い違っているんですよ」
「組織としての結論」と「遺族に寄り添う気持ち」のはざまで揺れていたとみられる、杉内氏。
そして―
「人事異動 杉内由美子 佐賀県警察本部長を免ずる」
体調不良を理由に、議会開会中という異例のタイミングで人事異動が発令されたのです。
そんな中、会見に臨んだ松下新本部長。
太宰府事件の対応に厳しい目が向けられるなか、「またも」これまでと同じ主張を繰り返しました。
◆松下徹本部長
「一連の申し出の状況を総括的に見てみますと、被害者の女性を巡る金銭貸借トラブルをどうにかしてほしいという趣旨で、被害者の身の危険を訴えるものでは無く、当時、鳥栖警察署としては遺族からの申し出に応じた対応をおこなったところではあります」
また遺族から再調査を要望された県公安委員会からも、「様々な相談の中で、被害者の身に危険が及ぶことを理解することは難しかったと考えられる」「今後はより一層丁寧に対応するべき」
そうした指摘を受けたことを明かしました。
さらにー
◆記者
「これが、県警としても公安委員会としても最後の再調査をしないという結論ととらえていい?」
◆松下徹本部長
「県の公安委員会が1月から8回に渡って、県警察の対応、相談等どういう風にやるのかということについても議論を頂いた、従いましてこれをもとに提言をいただいたものでございまして、これ以上の調査は考えておられないと思います」
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