2020/12/11 14:00
太宰府主婦暴行死事件。
テレビ西日本が独自に入手した佐賀県警の内部資料から浮き彫りとなった佐賀県警の対応を捜査のプロはどう見たのでしょうか。
◆佐賀県議会 総務常任委員会(12月10日)
共産党・井上祐輔県議「『継続』とするべきではなかったのか?どうして『解決』にチェックされた?」
県警・福地雅彦刑事企画課長「繰り返しになりますけど、本年10月に発表した結果は、本年7月にお伺いしたご意見を踏まえ慎重に事実を確認した結果に基づいて発表しています」
井上県議「委員長!質問に答えてないですよ。全く話が進まないじゃないですか質問に答えてくれないと。『遺族の方が納得をしていない』これは認識をしていますか?というふうにお尋ねしています。委員長も質問に答えさせて下さい。しっかり」
刑事企画課長「ご指摘の食い違いについて『何を指すのか判然としませんが…』」
井上県議「よくそんな答弁ができますね。遺族が主張されている内容と食い違っているというのは県民の皆さんもご存じですよ。それを判然としない。それは県民に寄り添う姿勢がないんではないですか?遺族に一言も謝罪はないんでしょうか」
12月10日の佐賀県議会(総務常任委員会)で議員の質問に答えず、これまでの主張をひたすら繰り返した佐賀県警。
◆杉内本部長直撃
記者「誰もが納得できる説明をされたとお思いですか?」
本部長「広報を通じてください」
記者「議会に対して不誠実な対応なんでは?」
本部長「・・・」
記者「謝罪はされるんですか?遺族に」
本部長「・・・」
委員会終了後に佐賀県警の杉内由美子本部長を直撃しましたが、何も答えず。目と鼻の先にある県警本部まで車を使い、逃げるように走り去りました。
2019年10月、高畑瑠美さん(当時36)が同居していた山本美幸被告(41)らから凄惨な暴行を受け、死亡したとされる事件。
遺族は事件前、佐賀県警鳥栖警察署に「瑠美さんを山本被告から救い出したい」などと14回も相談していました。
しかし、佐賀県警は一貫して「一連の相談は金銭トラブル」で、「対応に不備はなかった」と主張しています。
ところが、テレビ西日本が独自に入手した佐賀県警の内部資料にはその主張を覆す事実が―。
◆相談簿(2019年7月12日)
「令和1年7月12日」
「件名:他人から洗脳されている娘を救いたい」
◆相談簿(2019年8月7日)
「件名:姉を取り巻く環境が心配」
「姉は最近、悪い影響を受けているようですので、姉をなんとかしてその状況から救いたいです」
これは、遺族からの相談内容を記録した「相談簿」と呼ばれる佐賀県警の内部資料。
そこには「金銭トラブル」と一括りにするには無理がある内容が数多く記されていました。
刑事歴36年、あらゆる事件捜査に携わった福岡県警の元捜査員・梶原良博さんはひとつの仮説を立てました。
▼元福岡県警刑事 梶原良博さん
「1番最初に受け付けた警察官が、安易に考えて上司にも『金銭トラブルで大したことないんですよ』というふうに言ったんじゃないか。最初の方で事件が解決してしまっていると内部では完結してしまっている」
梶原さんは最初の頃の相談で「事件性はない」と判断し、責任者の決済が下りてしまったため、後で判断を変えられなかったのではと指摘しました。
▼録音された脅迫音声(2019年9月)
山本被告「あなたたちのおかげで、めっちゃ借金が増えてさ、めっちゃ生活潰されているんですけど」
田中被告「なぁナメた真似してくれたな、弁護士いれた◎△$♪×¥●&%#?!上等や、弁護士入れてどないなるかしてみたらいいやない。なぁ、聞いてる?黙りんこか?黙りんこか言うとんのや!◎△$♪×¥●&%#?!」
これは、瑠美さんが亡くなる1か月前に、瑠美さんの夫・裕さんが録音した山本被告らの脅迫音声。
決定的な証拠を持ち込み、被害届を提出しようとしましたが、鳥栖警察署の対応は―。
▼鳥栖署での対応音声(2019年9月25日)
家族「完全に脅しでしょこれ。こんな内容が延々3時間続くのですよ」
A巡査「ああ、なるほどですね。う〜ん」
家族「被害届をなんで受理せんと」
A巡査「そう簡単になんでも被害届を取れるものではない」
遺族「警察は、何かあれば責任とるんですか?」
・・・しかし、この日の相談簿には。
◆鳥栖警察署の相談簿
「脅迫として被害届をとるのは難しいと伝えたところ、申出人はわかりました」
「被害届等の意思 現在のところなし」
「解決」
佐賀県警は「刑事課が出払っていたので後日、来るよう説明した」と弁解していますが、相談簿にその記載すらなく、勝手に「解決」していたのです。
▼被害者ON
「なんで被害届を受理せんと?」
「ここまで言ってなんで受理してくれないんですか?」
▼元福岡県警刑事 梶原良博さん
「『今まさに人の命が危ない状態』と僕は思う。『なすべきことをなさなかった』ということは一番警察官として最低だったと思う」
かつて、警察の不手際で家族を失った遺族も、今回の太宰府事件について憤っていました。
◆桶川事件の遺族 猪野憲一さん
「おい、またかよ。まだかよというような。日本ってまだ変わっていないの?みたいな。非常に怖いですね」
こう語るのは1999年10月に埼玉県桶川市で発生した「桶川ストーカー殺人事件」で長女の詩織さんを亡くした猪野憲一さんです。
この桶川事件を巡っては、埼玉県警上尾警察署が猪野さんらから繰り返しストーカー被害の相談を受けながら、杜撰な対応をとった挙げ句、嘘の調書まで作成していたことが明らかになり、警察組織を揺るがす大スキャンダルに発展しました。
猪野さんは“太宰府事件”が“桶川事件”と似ていると話します。
◆桶川事件の遺族 猪野憲一さん
「あることがない、ないことがある。勝手に作ってしまうというところに非常に似ているなと怖いなと―。娘が亡くなって21年目なんですけど、警察の第一線、市民と接するようなところでまだ問題がある警察署があるというのは、非常に情けないなと」
数々の矛盾を指摘されながらも“対応に不備なし”と主張し、人がひとり亡くなっていながら謝罪の言葉ひとつも無い佐賀県警。
◆桶川事件の遺族 猪野憲一さん
「市民県民に理解されなくて、あなたたちは存在意義があるんですか?と。ちょっと違うんじゃないですか?と。小さなところで収まっていたら謝罪もへちまもないと思う。今後、もっとどんどん日本国中に火が蔓延するようになっていきますよ。それでも耐えられるんですか?誰のための組織なのかお判りでしょうかということを大いに問いたいですよね」
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