2020/09/30 20:00
▼山本美幸被告
「起訴されているすべての内容は間違いで無罪です」
弁護士を通じて行ったTNCの取材に対し、事件について関与を全面否認した山本美幸被告。
一方、共犯者として起訴された男は山本被告についてこう語る。
▼岸颯被告
「山本美幸という人間は、人の皮を被った化け物ですよ」
20代のころから貸金業を生業としていた山本被告。
その姿は、九州最大の歓楽街・中洲で頻繁に目撃されていた。
中洲のホストクラブ。
「みゆ姉」と呼ばれ、羽振りの良さはホスト業界で有名だったという。
▼ホストクラブ関係者
「いろんなホストを連れて飲みに行ってドンパチして」
「10万円は堅いっちゃないかな。最低でも」
「ほぼ毎日のように飲み歩いてたんじゃないか」
多くの債務者から搾り取ったとみられる金で、派手に飲み歩く生活。
さらに山本被告は、その飲食代を「新たな恐喝」に利用していたと、かつて同じ被害にあった高畑瑠美さんの兄、亮太さんは証言する。
▼兄・亮太さん
「飲み行くよっていうふうに言われてて、お金が無いけど行って良いんですか?って言ったら『構わん構わん』と言われてたのでついて行ったが、『あのときのお金出してたわけやけんお金出して』というのは言われた」
「おごるから大丈夫」と連れ出しながら、後日、「飲み代が未払いだ」として架空の借金を背負わせる。
そして、トラック運転手の田中政樹被告に暴力団員を演じさせ、相手を追い込んでいくのがいつもの手口だったという。
▼山本被告の同級生
「お父さんがヤクザ関係の仕事してて、関わるといいことはないよみたいな話が出ていた」
佐賀県基山町で育った山本被告。
中学時代からヤクザというセリフを多用していたと同級生は話す。
▼山本被告の同級生
「変な人です」
「強がる。ウソばっかりつく」
「自分を強く見せたいんじゃないですか?私はヤンキーみたいな」
「校舎の裏でたばこ吸ったりシンナー吸ったりとか。(Q.それは1人で?)1人で、『シンナー吸う?』とか誘われたこともある」
いわゆる「スケバン」として有名だったが、特に親しい友人はおらず一匹オオカミだったという。
少女時代から多用してきたウソ。
そして田中被告に暴力団員を演じさせて、多くの人を借金地獄に陥れたとみられる山本被告。
被害者たちが返済に行き詰まると、次の手段としていたのが「戸籍の操作」だった。
山本被告の共犯者として起訴された岸颯被告の戸籍謄本。
なぜか、瑠美さんの兄・亮太さんと養子縁組を結び、戸籍上は親子となっている。
岸被告はその理由について次のように説明した。
▼岸被告
「私が亮太さんの代わりに金を集めることになり、その流れで戸籍のつながりができた」
「やり方は山本さんの指示によるものですが、具体的な内容は法律に触れるため言えません」
戸籍を動かし、違法な手口で金を作っていたことを認めた。
さらに取材班は、書類の中に「ある女性」の名前を見つけた。
酒井美奈子さん。
岸被告と、戸籍上は2週間だけ婚姻関係にあった女性だ。
関係者によると、酒井さんは今から3年前、山本被告らと同居生活を送ったのちに病死したことがわかった。
しかし、岸被告は酒井さんの死についてこう証言する。
▼岸被告
「美奈子さんが亡くなったのは、私の運転する車の後部座席で、死因は『急性心不全』でした」
「ですが、私はいまでも美奈子さんは病死とは思っていません」
病死と思っていないとは、一体どういう意味なのかー。
9月15日に開かれた田中政樹被告の公判で、その疑念はさらに深まった。
被告たちが瑠美さんの遺体を運ぶ最中に交わした会話の録音が法廷で再生され、その中に次のようなやりとりがあったのだ。
▼山本被告
「美奈子のときはあざも何もなかったけんよかっただけよ」
「あざがあったら絶対調べられる」
▼岸被告
「戸籍も調べられるかも」
▼山本被告
「戸籍調べられたらアウトよ」
「亮太のことから全部バレるわ」
▼田中被告
「亮太のこと?」
▼山本被告
「亮太のことから美奈子のことまで全部よ」
事件後、岸被告は山本被告についてこう語った。
▼岸被告
「私は4年間、一番身近で山本さんの行動を見てきました。なので山本美幸とは一体どういう人間なのか、誰よりも理解しているつもりです」
「山本美幸という人間は、人の皮を被った化け物ですよ」
酒井さんと同じように山本被告と同居させられ、様子がおかしくなっていった高畑瑠美さん。
そんな中、夫の裕さんにかかってきたのが、架空の借金の返済を要求してくる山本被告たちからの脅しの電話だった。
▼脅迫電話
山本被告「あなたに貸したお金はきちんと返済してくださいと約束しておりますので、返済をして下さい」
田中被告「弁護士入れたところで@×▼★□@×▼★□」
山本被告「これが脅しとか言うんやったらゾッとするわ、マジ」
「なんとか瑠美さんを山本被告から引き離したい」
裕さんは3時間に渡った脅迫電話を録音し、警察署に駆け込んだ。
しかし、佐賀県警の対応はー。
▼鳥栖警察署 A巡査
「いまから3時間聞くというのはあれなので」
「自分は5分くらいしか聞いていないですけど」
「どうしようもない状況じゃない」
3時間ある録音データをほとんど聞かず、被害届の提出を断ったのだ。
▼裕さん
「警察署を出て行くときは放心状態に近かった。警察が動いてくれないんやったらどうしたらいいんだろうって…」
そして、このわずか1カ月後、事件が起きた。
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