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【独自取材】「すくえた命」太宰府市主婦暴行死事件(1) なぜ主婦は事件に巻き込まれたのか?謎に迫る


2020/09/28 20:00
今週、5回にわたって「ある事件」について特集でお伝えします。

2019年10月、太宰府市で1人の女性の遺体が見つかりました。

佐賀県基山町の主婦、高畑瑠美さん・当時36歳。

全身に木刀などで殴られたあとがあり、その痛々しい姿は遺族が瑠美さんとわからないほどでした。

福岡県警はその後、男女3人を逮捕します。

太宰府市の無職・山本美幸被告と岸颯被告。

筑後市の元暴力団組員・田中政樹被告。

3人は傷害致死や死体遺棄などの罪で起訴され、いずれも起訴内容を否認しています。

私たちがこの事件に注目したきっかけは、「被害者と被告らのいびつな関係」でした。

家庭を持つ瑠美さんが、山本・岸両被告と奇妙な同居生活を送っていたのです。

瑠美さんはなぜ赤の他人と同居していたのか。

TNCでは、1年にわたって事件の関係者への取材を重ねました。

すると、非常に複雑な人間関係と一家を飲み込んだ山本被告たちの脅迫や洗脳、そして支配の構図が浮かびあがってきました。

この「太宰府主婦暴行死事件」について「すくえた命」と題して、5回にわたってお伝えします。


事件が起きたのは、2019年10月20日。

太宰府市にあるインターネットカフェの駐車場で、佐賀県基山町の主婦、高畑瑠美さん(当時36)が変わり果てた姿で見つかった。

捜査関係者によると、遺体には激しい暴行の痕が無数に残されていたという。

▼瑠美さんの母親
「今でもまだ娘が亡くなっているとは思えません」

▼瑠美さんの夫・裕さん
「助けて欲しくて警察に行っているのに、警察が動いてくれないんだったらどうしたら良いんだろう」

▼記者
「山本容疑者の身柄が検察庁に送られます」

福岡県警は、遺体が見つかった車に同乗していた太宰府市の無職、山本美幸被告ら男女3人を傷害致死などの罪で逮捕した。

夫と子供2人の4人家族だった瑠美さん。

長距離トラックのドライバーで家を空けることが多い夫の裕さんにとって、留守を任せられる「頼れる妻」だった。

▼夫・裕さん
「無理だけはせんようにとか、寝不足にならないようにとか、そこら辺を気を遣ってくれていた。家のことを何でも自分からよくやってくれるいい嫁でした」

どこにでもある幸せな家庭…だったはずが、事件が起きる数カ月前、瑠美さんは突然家を出て行ったという。

▼記者
「被害に遭った女性と被疑者数人がこちらの建物に住んでいたとみられます」

太宰府市にあるアパート。

家を出た瑠美さんが山本被告や岸被告と生活を共にしていた場所だ。

瑠美さんはなぜ、赤の他人と奇妙な同居生活を送っていたのか。

そのきっかけは瑠美さんの兄の「金銭トラブル」だった。

▼夫・裕さん
「兄のことで(山本被告から)お金を請求が度々あった」

瑠美さんの兄は約10年前に失踪。

山本被告は、兄の借金が残っているとして、保証人でもない妹夫婦にその借金を肩代わりさせていた。

瑠美さんはその返済に苦心していたというが、取材を進める中で目を疑うような写真を入手した。

事件の半年前に撮られた、山本被告と瑠美さんが肩を並べて酒を飲む写真だ。

金を取り立てられていたはずの瑠美さんは、いつの間にか山本被告に取り込まれ、家族に金を要求する側に回っていたのだ。

瑠美さんの母親は、そのときの様子をいまでも不審に思っている。

▼瑠美さんの母親
「瑠美が電話をしてきたときに、後ろで何か聞こえるんですよね。誰かがいるみたいな。誰かに言わされているそんな感じがした」

これは暴行現場のアパートで見つかった、瑠美さん直筆のメモだ。

▼メモ
「この前、メールで借金取りって言ったんだけど、実は使い込んだもので、お金を返してって言われとると。30万を返してって言われているから準備してほしい」

母親に金を要求するための文言が、一言一句書いてある。

まるで何かの「手引き書」のようだ。

瑠美さんを仲間に取り込んだ山本被告は、田中政樹被告に暴力団員を名乗らせ、夫の裕さんに圧力をかけていく。

これが、実際の音声だ。

(テープレコーダー)
▼山本被告「あなたに貸したお金はきちんと返済して下さいと約束しておりますので、返済をして下さい」

▼夫・裕さん「すみませんできません」

▼山本被告「何が?」

▼田中被告「弁護士入れたんか?」

▼夫・裕さん
「はい」

▼田中被告
「弁護士入れたところで・・・。やれるもんやったらやってみ・・・。いい加減にしとけ、おりゃ」

妻を取り込まれ、暴力団を名乗る男にも脅された裕さんは、警察に被害届を提出しようとした。

しかし、佐賀県警の対応は予想だにしないものだった。

(音声データ)
▼鳥栖警察署 A巡査「払わなかったら殺すぞとか、払わなかったらどうするっていうことがまだ出てきていなくて、今のところは脅迫だと断定できないない」

▼遺族側「被害届を何で受理せんと?」

▼鳥栖警察署 A巡査「どうしようもないという状況という感じではないので」



▼夫・裕さん
「警察署出て行くときは自分の頭の中が放心状態に近かった。警察って、なんかあっても頼りにならないのかなって考えたりした」

遺族は2019年6月から9月にかけて11回も相談に訪れたものの、佐賀県警はとうとう重い腰を上げることはなく、最後の相談から1カ月後に瑠美さんは亡くなった。

瑠美さんの身に一体何が起こっていたのか?

事件後、取材班は10年に渡り失踪していた瑠美さんの兄と接触することができた。

借金と失踪は山本被告による「巧妙な罠だった」と証言した。

▼兄・亮太さん
「マインドコントロールされていたと思います」

Q事件について知ったときはどういう気持ち?

▼兄・亮太さん
「(瑠美の死が)現実となったときに、正直どうしたら良いか分からなくなってしまったのが事実」

そして、遺族のSOSに応えなかった佐賀県警の対応に迫った。

▼記者
「Aさん?TNCなんですけど、高畑瑠美さんの事件について伺いに来ました」
「このままで良いんですかね?遺族は後悔しているんですよ」
「Aさん!」
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