◇ソフトバンク6-5ロッテ(28日・ペイペイドーム)
激しいシーソーゲームの最後に登場した川島がチームを2年ぶりの開幕3連勝に導いた。
先に主導権を奪ったのは栗原の2ランで先制したソフトバンク。40歳で開幕ローテ入りした和田の好投でテンポよく試合が進んだが、同点の7回に流れが変わった。
松田の失策をきっかけに勝ち越され、8回にデスパイネの2ランで再逆転するも、9回に3連投を避けた森の代役として抑えで今季初登板した岩嵜が2死から逆転2ランを献上。追い詰められたところで9回裏、2死二、三塁から柳田が申告敬遠された後に、代打の川島が今季初打席で逆転サヨナラ打を放った。
劇的すぎる白星で異様なムードが漂う中、スポットライトに照らされたお立ち台に川島が登場。「あそこで四球は誰でも分かりますよね。ベンチの仲間、首脳陣から『慶三、打ってきてくれ』と言われたので打ちました」と軽妙な語りの中にも感慨を込めてしびれる一打を振り返った。
ユニークな言動が前面に出るが、周囲への気遣い方は人一倍だ。松田のエラー絡みで勝ち越された後には、ベンチで同じ内野手の今宮や周東に「おまえら救えよ。先輩を助けてやれ。明日はわが身だぞ」と声を掛け、岩嵜が打たれて戻ってきた9回は「声を掛けてあげられなかった」と悔やみながらも、他の選手に顔を見ながら何とかするぞ…との合図を送った。
そして迎えた最後の場面。「みんなの思いだけ。個人的な感情は抜きにして、みんながつないでつないで。負けたくないチームメートの集まりなので、その思いがネクストに立った時からあった。みんなの声が聞こえたので、それに応えてやろうという気持ちだけで打ちました」。左キラーとして抜群の強さを見せるが、送り出されたのは右投手の場面。ベンチの覚悟も受け止めて、今季初打席で最高の快音を本拠地に響かせた。
歓喜の輪が解けた後、今季初黒星が一転して白星になった岩嵜とハグし喜びを分かち合った。「(岩嵜)翔が『ありがとうございました』って言うんですよ。いいチームですね。全然いいよとは言えなかったけど、次は頼むよと伝えたら『分かりました』って。今日もいい球いってましたからね。野球は何が起こるか分かりません」。何が起こるか分からない野球を自らやってのけたベテランが、入場制限がありながらも2年ぶりに観客が入って迎えた開幕カードを鮮やかに締めくくった。