2021/02/13 21:30
ソフトバンク元ヘッドコーチの達川光男氏が5年連続日本一を目指す王者の”懸案事項”を指摘した。
コロナ禍で制限が厳しい中、達川氏はTNCテレビ西日本の取材で宮崎キャンプを第3クール中に視察。選手との接触はできなかったが、遠巻きながら見た甲斐の動きに正捕手としての存在感が増したことを確信したという。
「図抜けとるね。この4年間で約500試合に出て、自信がにじみ出とりますよ。わしがヘッドで入ったときのキャンプ(2017年)は鶴岡、高谷がいて甲斐はその次の立場じゃったが、いまはもう先頭に出てやっとるけえ。甲斐がいるとパッと締まる。そういう感じじゃないですかね」
甲斐と他の捕手、その最大の差はキャッチングだという。甲斐といえば強肩が売り。2018年の広島との日本シリーズでは6連続盗塁阻止のシリーズ新記録を打ち立て全国に「甲斐キャノン」の名を知らしめたが、達川氏は「今の野球は1.2秒台で投げればいくら肩が弱くても走らない」と指摘する。その上で、ソフトバンクというチームならではともいえる1軍捕手の絶対条件を挙げた。
それが「千賀のフォークを捕れること」だ。
達川氏がヘッドコーチだった当時、甲斐をはじめとした捕手陣は総じて千賀のフォークにはどういう軌道で落ちてくるか読めない難しさがあると口にしていたという。かつて甲斐が先発マスクをかぶった試合の終盤に代打を送られたときには、2番手でマスクをかぶった高谷がフォークの精度を「やばいっすわ」と漏らしたそうだ。この試合では甲斐がフォークを多投するリードをしていたことを逆手に取り、高谷は直球を中心に要求。そもそも直球も常時150キロ台と打者にとって簡単に攻略できるレベルではなく、結局、千賀は完投した。
今年のソフトバンクは高谷、九鬼が手術明けでリハビリ中。A組の捕手は甲斐、栗原、海野、谷川原だが、栗原は一塁、三塁、外野も練習しており、開幕時の2番手捕手争いは事実上、海野、谷川原ということになる。達川氏はこの2番手に千賀のフォークを受ける、またはワンバウンドを止める技術がなければ甲斐の負担がさらに大きくなると危惧する。
昨年のシーズン終盤に抑え捕手のベテラン高谷が離脱した際、甲斐の控えとしてベンチにいた捕手は当時ルーキーでわずかな1軍経験しかなかった海野。栗原は一塁や外野で出場しているという綱渡りの状況の中で、甲斐は正捕手として故障することなくポストシーズンまで守り切った。「その経験があるから今年も甲斐と海野でいくのでは」と予想する達川氏は、海野の育成も急務だという。
「海野も悪くないが、捕手はならうより慣れろ。(現在はリハビリ中の)千賀が投げるようになったら、バッティングはいいからずっとブルペンで受けていた方がいい。あのフォークは難しいがずっと受けていれば捕れるようになる」
自身がヘッド時代に甲斐を抜てきした理由の一つも千賀のフォークを受けられたから。千賀と甲斐は2011年に高卒育成で入団した同期の同学年で、ファーム時代にバッテリーを組んできた歴史もあった。
最速161キロを誇るストレートと「お化け」と称されるフォーク。人並み外れたエースのボールを甲斐だけではなくすべての捕手がしっかり受け止められるようになれれば、チームとしても選択肢は広がる。達川氏は「甲斐がいなくなったら大変じゃが、そうなったときのことを考えるのも大事」と強調した。
最新の福岡のニュース