2020/12/08 21:30
2019年、太宰府市で起きた主婦暴行死事件で、テレビ西日本は佐賀県警の内部文書(相談簿)を独自で入手しました。
◆鳥栖警察署の相談簿
「申出概要」
「脅迫の被害届は出せないか」
テレビ西日本が独自で入手した佐賀県警の内部資料。
2019年9月25日、“太宰府事件”の被害者、高畑瑠美さん(当時36)の夫から山本美幸被告(41)らの脅迫被害の相談を受けた佐賀県警鳥栖警察署が作成した相談簿と呼ばれる書類です。
そこには・・・。
◆鳥栖警察署の相談簿
「解決」
遺族が、知らぬ間に山本被告らの脅迫被害を「解決」と処理されていたのです。
◆脅迫音声(2019年9月)
山本被告「あなたたちのおかげで、めっちゃ借金が増えてさ、めっちゃ生活潰されているんですけど」
田中被告「なぁ、ナメた真似してくれたな、弁護士いれた◎△$♪×¥●&%#?!上等や、弁護士入れてどないなるかしてみたらいいやない」
瑠美さんの遺族は事件前、鳥栖警察署に合わせて14回相談していましたが、佐賀県警は捜査に乗り出しませんでした。
◆録音音声(2019年9月25日)
遺族側「被害届をなんで受理せんと」
A巡査長「暴力団関係者と実際に会って『俺はこういう者だ』と名刺を渡されたかというと、そうじゃない」
遺族側「身の危険に関することは生活安全課ではない?」
A巡査長「そうです。そうなんですけど、脅迫という罪を扱っているのは生活安全課ではない」
遺族側「でもなんでこれだけ言って受理しないのですか?」
鳥栖警察署は遺族の訴えを真摯に受け止めず、被害届の受理を拒否。
この相談の約1カ月後、瑠美さんは山本被告らから凄惨な暴行を受けて死亡したとされています。
警察の対応に遺族が強い疑念を抱くなか、2020年10月、佐賀県警は「対応に不備なし」とする内部調査の結果を発表。
さらに12月2日、県警トップの杉内由美子本部長は―
◆佐賀県警 杉内由美子本部長
「後日、刑事課に改めて申し出てもらうよう依頼をしたものの、再訪がなかったため事件性の判断をするに至らなかった」
杉内本部長は“被害届の受理を断ったのではなく、遺族が日を改めて鳥栖警察署に相談に来なかったから事件性があるとは分からなかった”としたのです。
しかし、その説明には大きな矛盾がありました。
鳥栖警察署作成の内部資料には・・・
◆鳥栖警察署の相談簿
「脅迫として被害届をとるのは難しいと伝えたところ、申出人はわかりました」
「被害届等の意思」
「現在のところなし」
「解決」
内部資料には、遺族に後日、鳥栖警察署に改めて来てもらうように伝えた話は一切なし。
事案は「解決」したなどと勝手に処理していたのです。
この資料の存在に気づいた遺族は、佐賀県警に理由を尋ねました。
遺族側「『被害届の意思が現在のところなし』になってる。これはどういうことなんですか?」
佐賀県警側「書類的にはそういう風に書いてますけど、また来て下さいとお願いしたということについては報告がなされてまして」
遺族側「解決になっているじゃないですか?後日、来て下さいってことなら継続になるんじゃないんですか?」
佐賀県警側「この時は、また来てもらって、またそこで相談をしてもらうという意思で、こういう書き方をしたということですね」
遺族側「後から来てもらうという記載がないことについては、不備とは言えないんでしょうか?」
佐賀県警側「最終的に言ってたことが確認できて、あの―」
遺族側「実際、本来であれば継続なわけでしょ?」
佐賀県警側「そこは、ちょっと何とも申しあげられませんけど」
遺族側「や、それがおっしゃっている意味が分からないんです、継続案件なのに、なんで解決の方になるんですか?」
佐賀県警側「当時は、この件については、また、再度来て頂くということで、この相談については解決という判断をしていますね」
【スタジオ記者解説】
この書類はいわゆる「相談簿」と呼ばれる内部資料で、問題点は大きく2つ。
1つ目が「被害届を出せないか」と訪ねているのに「被害届の意思、現在のところなし」で処理。
遺族はこの日、被害届の受理を強く求めています。
しかし、なぜか警察官Aは「現在のところ意思なし」にチェックしていました。
これについて県警は12月5日、遺族に次のように説明しました。
「後日来て下さいと伝えていたので、また来られた際に、改めて相談簿を作る対応にしたようだ」
なおさら「意思はあり」にすべきと感じるんですが、仮にそれでよしとしてももうひとつ疑問が生まれます。
そうであるなら「解決」ではなく「継続」や「引継ぎ」にチェックされるべきなんじゃないのか?
そこが2つ目の問題点です。
警察官Aの報告書は―。
「脅迫として被害届を取るのは難しいと伝えたところ、申出人は『わかりました。相手側に暴力団員がいるとのことで、押しかけが怖いのでパトロールをして欲しいです』旨申し立てた」
遺族が「後日来る」という記載が一切ありません。
それでいて「解決」にチェックがされているんです。
これでは、報告書を見た上司は「脅迫の文言はなく、被害届は受理できないと被害者に説明したら、納得して帰ったので解決している」と捉えるのが自然です。
佐賀県警の言い分は―。
◆県警説明 録音音声(2020年12月5日)
佐賀県警・木下公三管理官「当直の幹部をしていたものが、相談のとりまとめをする警務課というところの課長だったんですよ。だからその、相談を総括するところの課長はその内容を承知していたという話ですね」
遺族・妹「判断する署長さんとかは、分からないわけですよね?」
佐賀県警・木下公三管理官「組織としては、だから、課長とかも知ってたわけですから、決して対応した職員だけがっていう話ではないと思うんですけど、そこは」
「解決」にはチェックされているが、警務課長も知っていたから署内では「継続」として共有ができていた。と報告書の記載とは違う弁解をしました。
この書類を見ると「対応に不備なし」とした本部長の議会答弁も説得力はなくなります。
少なくとも、本部長が県議会で答弁した内容は相談簿に記載がないわけです。
相談簿の不備を認めないばかりか、遺族には警察官Aへの聞き取り結果の詳細を明らかにしないとなると、遺族が納得できないのは当然だと思います。
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