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【独自取材】「すくえた命」太宰府市主婦暴行死事件(5) 疑問が残る警察の対応


2020/10/02 20:00
▼ジャーナリスト・大谷昭宏さん
「大失態・大汚点だ。佐賀県警何してたんだと」

亡くなった高畑瑠美さんの遺族は、佐賀県警の一連の対応に、今でも疑問を持っている。

▼瑠美さんの母親
「ちゃんと動いてくれていたのか。私たちの窓口になってくれていた人が関係部署に連絡を入れてくれていたのか、そこら辺も知りたいです」

「なぜ警察は動かなかったのかー」

遺族は2019年6月から、11回に渡って瑠美さんの異変や山本被告から金を要求されていることを鳥栖警察署に相談していた。

しかし、鳥栖警察署は「家族間のトラブル」などとして具体的な捜査は行わなかったという。

「“脅迫電話”への対応」

▼脅迫電話
「あなたに貸したお金はきちんと返済してくださいと約束しておりますので返済をして下さい」
「弁護士入れたところで@×▼★□@×▼★□」
「いい加減にしとけ、おりゃ」

夫の裕さんが、山本美幸被告と田中政樹被告から受けた電話。

実はこの数日前にも同様の電話があり、裕さんは警察に相談に訪れていた。

しかしー

▼夫・裕さん
「録音とかメモとか何やらがないから、そういうのもとってきてくれという感じで言われました。証拠がないから動けない」

そう言われた裕さんは、数日後にかかってきた電話のやりとりを録音して改めて署を訪れたにも関わらず、担当したA巡査は音声をほとんど聞かず、被害届の提出を断ったという。

さらに、この時の対応についてもう1つ疑問点がある。

「“脅迫電話“の文字起こしを被害者に?」

3時間ある電話の音声のうち、5分程度しか聞かなかったというA巡査。

その際に、次のような発言があったと複数の遺族が主張している。

▼遺族
「脅迫の文言がどこの何分にどういう風に言ったのか、わかりやすいようにして持ってきてくれと言われた」

A巡査は怯えている被害者に、録音を再び聞いて文字に起こし、どの部分が何の犯罪に当たると思うのか印を付けてくるよう言ったと言うのだ。

刑事事件に詳しいジャーナリスト・大谷昭宏さんは、このやりとりが事実であれば警察の消極的な姿勢には問題があると指摘する。

▼ジャーナリスト・大谷昭宏さん
「こんなれっきとした証拠があるじゃないか。市民の方がですね、お金絡み人間関係絡みで窮地に陥った場合というのは、どの部分が法律に触れるのか、どうすれば捜査機関が動くのかなんてプロでもないし分からないわけですよ。その中でどれだけ警察が積極的に動くかというのが問われているわけで、その点からいけば大失態、大汚点だ。佐賀県警何してたんだと」

遺族は2020年6月、佐賀県警に質問状を提出している。

佐賀県警の回答は口頭によるものだった。

ひとつ目の疑問「なぜ警察は動かなかったのか」。
対して佐賀県警の回答は「A巡査の報告書に遺族の主張が詳しく書かれておらず、捜査着手に至らなかった」だった。

佐賀県警の遺族への説明によると、相談などを受けた場合、その内容を報告書にまとめて最終的に署長まで共有されることになっている。

その報告書を基に捜査するかどうかを判断するのだが、A巡査が作成した報告書には遺族の訴えている内容が詳しく書かれていなかった。

その結果、組織として「緊急性がある事案と判断できなかった」という。

きちんと報告書に記載していれば捜査が行われ、瑠美さんが助かったのではないか。

そう遺族は考えている

疑問その2「脅迫電話への対応」。

A巡査は音声を殆ど聞かず、被害届を受理しなかった。

この電話についてはのちに福岡県警が山本・田中両被告を恐喝未遂罪で立件し、起訴している。

ではなぜ、佐賀県警では事件化されなかったのか。

佐賀県警の回答は「遺族が来署した際、刑事課の人間が出払っていたため後日出直して下さいという対応になった」というもの。

被害者は緊急性を要しているから訪ねていたのに…だ。

そして最大の疑問「なぜ遺族に録音の文字起こしを要求したのか」。

遺族はこの際、A巡査から「脅迫などに該当する箇所に印を付けてきてくれ」と言われ、「素人に分かるわけがない」と言ったが、「インターネットで調べれば罪の成立要件はわかる」などとA巡査に言われたと主張している。

しかし佐賀県警の内部調査に対しA巡査が答えた内容は、全く異なるものだった。

「警察が行う業務を説明したつもりで、遺族に文字起こしを要求したつもりはない」

主張が食い違っている。

一体どちらが真実なのか。

A巡査を直撃した。

▼塩塚記者
「(A巡査?)TNCですが、高畑瑠美さんの事件の件を伺いに来ました」
▼A巡査
「今、映しているんですか?」
▼塩塚記者
「映しています」
▼A巡査
「ちょっとごめんなさい、私は取材とか受けられませんので申し訳ない。上司に確認をします」
▼塩塚記者
「どうしてテープ起こし、文字起こしをしろと言ったのですか?あなた(A巡査)の説明だと『あくまでも警察の業務を説明したつもりで(言った)、遺族にやって下さいとは言っていないと(佐賀県警の調査に)答えていると思いますが、遺族は確実に『そうじゃない』と(言っています)。そこに怒っているわけですよ」
▼A巡査
「その件に関しては(佐賀県警の調査に)答えておりますので絶対に私は(話を)しません」
▼塩塚記者
「このままでいいんですか?遺族は(瑠美さんを救えなかったことを)後悔しているんですよ?答えられないんですね?A巡査!」

A巡査が今回の問題について口を開くことはなかった。

TNCでは改めて、これらの疑問点について佐賀県警に質問状を提出したが、2度も回答期限を延期された上、「確認に時間がかかっている」として現在(10月2日)も回答は得られていない。

今回の問題は、A巡査1人の問題ではなく、経験が浅い警察官に対応をほぼ一任し、サポートを行わなかった組織全体の問題だといえるのではないか。

遺族は死亡した瑠美さんについて「すくえた命」だったと訴えている。
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